Blog世界を感じる事実の断片

「私は豪華客船Oasis of the Seasを楽しめない」~世界を感じる事実の断片(2)

まさに、個人的感想である。
マイアミ半島の寄港地、フォートローダーデールを発着し、ハバナ、米領バージン諸島などを廻る7泊8日の船旅に出かけたのは、13年夏だった。以前からカリブ海の島々に訪れたかったというのが参加理由である。そこでは、私の知らない世界が展開されていた。
まず、この船の概要だ。ハバナ船籍、排水量22万トンの世界一大きい客船、地上16階建て、5400人収容し、1500人のスタッフが働く。夏はハリケーンを避け、地中海方面中心だが、冬カリブに戻ってくる。私たち夫婦は、夏1回だけのカリブ海クルーズに参加した。
私たちは1日4万円(2名分)くらいの比較的いい部屋を予約したが、安い部屋なら、1泊1万円ちょっとで泊まれる。3食付なので、「豪華」じゃなくて「破格」である。

指定された部屋に行くと、すでに荷物が届けられていた。これからの旅に関する説明メッセージを読む。午後5時に日本人向けのツアー説明会があると知り、待ち合わせ場所に行く。痩せたおじさんが一人、にこやかに迎え、説明が始まる。「他の人は来ないのですか」と聞くと、「ご夫妻だけです」と言う。5000人中日本人は2名だけだった。「え~!」

BS放送でよく「豪華客船」の旅番組が放送されている。ルート、寄港地、レストラン、食事、設備、エンタテインメントなど取り上げ、絶賛する。リタイアした上品な白人たちがお客さんで、それぞれ船旅を楽しむ。こんなイメージが固定している。しかし、実際は異なっていた。Oasisで一番目立つのは、若い中国人たち。アメリカ、カナダに留学していて、夏休みに遊びに来た感じである。2番目がスペイン語圏の人たち。寄港地に降りる人もいそうだ。その他はアメリカ人中年で、リタイア組は多くない。

船内設備は充実している。大劇場、水上劇場、アイスリンク、イベントスペースなどで毎日、プログラムが組まれている。1回だけ無料のことが多い。ビュッフェスタイルとフルコースのレストランがあり、基本無料だが、日本料理やイタリアンなど別途有料レストランもある。船内のメインストリートでは、「ディズニーパレード」が毎日、練り歩く。

この他、ダンス教室やセクシーコンテスト、カラオケ大会などが時々開催される。右の写真は、「The Most Sexual Man Contest」、その下の写真は、カラオケ大会表彰式。暇だったので、カラオケ予選に参戦、見事決勝で3位となった。1位と2位は、黒人の太っちょおばさん、アレサ・フランクリンとゴスペルを歌う。貫録勝ちである。因みに私の演目は、「サティスファクション」と「天国への階段」だった。帽子を投げたり、シャツを脱いだりしたことで評価が上がった(狙い通り)。予選で米国白人2人が歌った。一人は、「アメリカ、アメリカ・・・」というアメリカ讃歌を歌い、もう一人は「国歌」を歌った。その選択にぞっとした、自分だけが誇らしいと思う、見たくない場面だった。

寄港地に朝着くと夕方までフリーである。リゾートに行って、海水浴、シュノーケルをするか、免税の貴金属、ブランド品を買うくらいしかない。船の近くで釣り糸を垂らすとすぐ警備員に追い出される。ただ、時間をつぶしていた。まあ暇もいいけれどね。結局、このクルーズに私の場所はないという結論に達した。

4 comment
  1. アジアの安めのクルーズに一度だけ乗船したことがあります。「こんなものかしら」と思い、本場(?)のカリブ海クルーズはもっとステキなのかしらと思っていましたが。。。やはり現実とイメージは乖離しているんですね。参考になります。
    私の乗ったアジアのクルーズでは、無料の食事はコーヒーも含めてまずく、有料のレストランはとびきりおいしかったです笑 ですので、一度有料の食事をしてしまうと無料の食事が食べられなくなってしまうほどでした。
    船の中なので、選択肢が少ないですよね。

  2. 私、旅行系のライターをしているものですから、つい旅関係の記事にばかり目がいってしまいます。
    仕事柄、取材に行った先のマイナス点は書けず、同業者の記事もあまり信用していません笑
    その点、旅と無関係のかたが描かれるブログはとても参考になります。
    密かに前澤さんを「旅の師匠」と思っております。

  3. 「旅の師匠」とは、光栄です。海外に初めて行ったのは、38歳です。ハイビジョンの視察でロサンゼルス、ラスベガス、ワシントン、ニューヨークに行きました。それ以来、毎年どこかに行くことになり、2001年~08年には、5回~9回くらい行きました。少し旅慣れたために、生命の危険があまりないと判断すれば、どこにでも入っていきました。運のいいことに、今まで命をつないでいます。
    ところでの仕事柄、マイナス点は書けないことは、その通りだと思います。しかし、ご自分のノートには悪いことを忘れないように書いておくのは、どうでしょうか。将来、別の名前を使って、、「旅行ライターが書けなかった世界最悪のサービス」なんて本の出版は面白そうですが、どうでしょう。

  4. ありがとうございます。そのアイデア、いただきます笑
    「旅行ライターが書けなかった世界最悪のサービス」、面白そうですね!
    もし誰かがそういう本を出したら、真っ先に買います笑
    海外に行くと、観光地やサービスに関しても日本人の特殊性を感じることがよくあります。
    自分個人としてはOKなレベルでも日本人旅行者の目線で見るとどうかな?などと考えてばかりいるので、旅先でも自分の感受性を押し殺してしまうことがままあり、感動も少なくなってきているように感じます。職業病かもしれません。

    前澤さんの旅のブログを読んでいると、自分の旅の感受性が戻って来るようで嬉しい気持ちになります。
    旅先でのエピソードも面白く、人間力の高さを感じます。
    やはり「旅の師匠」と呼ばせてください。

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