Blog学生の主体性を引き出す方法の模索

「プレゼンテーション授業で学生を変える」~学生の主体性を引き出す方法の模索(1)

今回からまたまた新シリーズを始める。私が大学でどんな授業を展開し、どんな課外活動をしてきたか。学生が成長するのは、自ら率先して学習しようとする主体性が必要である。その主体性をいかに引き出せるかが鍵だと思う。さて、それはできたのか、自分なりに検証したい。何かの参考になれば、幸いである。

山梨県立大学での教養科目で「プレゼンテーション」を12年間教えていた。これは開学と同時に私が開講した授業で、1年生から受講できる。一般的に高校までの教育では、自分の意見を人前できちんと伝えることを教えない。学生は、一様に「人前で話すのは苦手だ」という。その苦手意識を払拭し、人前で楽しく的確に話せるように、授業を展開した。内容は、サラリーマンの経験を基に独自に考案し、修正を繰り返してきた内容である。15回の授業で多くの学生が変わっていくのを目の当たりにした。
第1回のオリエンテーションで、2つの必須要素を指摘した。それは、人に伝える内容があることと伝えたい気持ちがあることである。それがあれば、能力は必ず向上する。
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第1回授業の際に学生に配布するシラバスは以下の通りである。
Presentation 授業内容(月曜2時限) <私の最終年度2016年の場合>                   
<事前に注意すること>
1、 基本的に毎回プレゼンをします。出席しないと単位になりません。
2、 宿題を忘れるとうまくいきません。当日考える時間がない時があります。
3、 次回休む場合は、事前に言ってください。対応を考えます。
4、 与えられた時間内に作業してください。遅れると他の人に迷惑をかけます。
5、 何か質問がある人は、気軽にメールしてください。
6、 配布した資料や自分で作った資料は、ファイルしてください。
7、 評価方法 出席を前提として、さらに積極的に授業に参加すること。
   平常点70点+最終プレゼン30点(その人の進化度を評価する)。
<到達目標>
1、自信をもって自分の意見を言えるようになること。
2、分かりやすく伝える技術を習得すること。
3、決められた時間に合わせた的確な内容を作成できること。
<授業内容> ~ 変更されることがあります。
1、4月18日 オリエンテーション 自己紹介 <印象つける> Personal(以降P)
2、4月25日 プレゼンテーションの意味 「○○に不満!」 <吐き出すこと> P
  「目標シート」、「誓約書」は、当日記入して提出。
宿題:「目標・方法・実践・結果」第1項目記入。
   5月2日 (休講:連休を利用して、新疆ウイグルに行ってきた)
3、5月9日 課題テーマ1を個人発表 「中身のあるメッセージ」<演じること> P 
第1項目提出。宿題:「活力ある日本を作るには」
4、5月16日 課題テーマ2を論議 「活力のある日本を作るには」<議論すること>
Group(以降G)全員がきちんと発言できる環境を作ること。
宿題:議論したことを各自まとめておくこと。第2項目提出。
5、5月23 日 課題テーマ2をクループ発表 <発表を演出すること> G 
   発表資料を全員で作成すること。役割分担して発表すること。
宿題:「わがふるさと自慢」 
6、5月30日 課題テーマ3を個人発表① 「ふるさと自慢」<発見すること> P
  宿題(写真、絵、PPT、もの、その他)
7、6月6日 課題テーマ3を個人発表② <分かりやすくすること> P
   宿題:「エピソード集」
8、6月13日 課題テーマ4を個人発表 「人に伝えたい話」<感動を与えること> P 
  全員のプレゼンのビデオ撮影をします。
9、6月20日 グループによる「交渉シミュレーション」<作戦を練ること> G
10、6月27日 グループによる「放送シミュレーション」<現場で工夫をすること> G
11、7月4日 「突然のテーマへの対応」<頭を回転させること> P
12、7月11日 収録ビデオを見て自己チェック <自己チェックすること>
   実技試験のテーマ発表  宿題:「私のセールスポイント」
13、7月18日 (祝日開講)プレゼンのノウハウ <楽しくアピールすること> P 
「目的と結果」提出。
14、7月25日 実技プレゼンテーション① <一人5分間、うまく話す>
15、8月1日 (補講期間)実技プレゼンテーション②
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以上のシラバス中、私が工夫したポイントを説明したい。
1、 進化度の評価とは、各人の努力による成長度で評価することである。
初めから「話がうまい人」もいるし、「下手な人」もいる。その絶対値で評価するのではなく、最初の授業から、何に挑戦し、どう変化したかを評価する。積分的絶対評価でなく微分的相対的評価である。
「目標シート」、「目標・方法・実践・結果」は、自分の分析と目標設定を明確にし、実践できるように意識化した。
2、「誓約書」とPersonal(以降P)Group(以降G)
  誓約書は、授業で話された個人情報を本人の許可なく、第3者に伝えないことを誓約してもらう。個人的に少し恥ずかしいと思っていることを、勇気をもって発表できる環境を整備する必要から義務付けている。もし破った場合は、単位取り消しとする。
  Personalは、個人で考えて発表するもの、Groupは、集団で意見をまとめ発表すること。両方とも現実社会では必要である。
3、自己紹介 <印象つける> P
  最も簡単なプレゼンであるが、多くの人は意味を理解していない。挨拶ではないのだ。自分を印象付け、他人に話しかけられるヒントを与えなくてはならない。できるだけ具体的に述べ、自分の個性が醸し出されるように鍛錬する。
4、「○○に不満!」 <吐き出すこと> P
  一番簡単な主張である。誰でも不満を持っていて、誰でも最も言いやすい。これをプレゼンの導入部と位置付けている。なお、すべてのプレゼンは、原稿を読んではならない、また与えられた時間厳守で行う(受講者人数で変化がある)。
5、「中身のあるメッセージ」<演じること> P 
  自分が学長として新入学生に短いが「きちんとした話」をする設定で話す。
  これが第2の導入部。自分の意見というより、必要だと思う意見を、立場を変えて話す。プレゼンの要素の中には、日常でなく、その場を「演じる」ことも重要だ。
6、「活力のある日本を作るには」<議論すること> 当日発表 G
  当日関心によってグループ分けして、討議し、役割を決めて、発表する。自分の意見だけが受け入れらることにはならず、どう妥協するかが問われる。
7、「活力のある日本を作るには」<発表を演出すること>修正して発表 G 
  前回の反省を踏まえて、事前に情報を収集し、まとまった発表ができるようにした上で、実践する。一般にWSでは、一回ぽっきりの発表が多いが、実は反省をしてブラッシュアップすることが重要だと考えている。
8、「エピソード集~人に伝えたい話」<感動を与えること> P
  人に伝えたい個人のエピソードを用意し、発表する。2週間以内にそうしたエピソードを10個以上リスト化しておくように指示する。その後の授業のちょっとした空き時間に突然指名して、発表してもらうことを告げておく。(別稿で詳細を語る)
9、ビデオ撮影と自己チェック<自分がどう見えているか> P
  自分の姿は、見ることができない。癖もある。しかし、癖はあまり矯正せず、姿勢や体の揺れ、発声の良し悪しなどを意識化するようにする。
10、「交渉シミュレーション」<作戦を練ること> G
  私の所有するグッズを用意し、グループに分け、それを私に売り込む商談を行う。グッズによって、売り込み対象を変え、ダブらない設定にする。名刺交換、挨拶、無駄話、商品説明、料金交渉などを行う。学生は結構苦労する。
11、「放送シミュレーション」<現場で工夫をすること> G
  ニュースの中継のような設定で、情報をどう伝えるかを実践する。局内アナウンサー、キャスター、現場アナウンサー、被取材者(1名~2名)の役割を決め、事前に私が用意した中継場所にふさわしい内容を考え、全体で5分間の時間厳守で報道する。
12、「突然のテーマへの対応」<頭を回転させること> P
  当日、私がテーマ設定した内容について、即座に考え、自分なりの話をする。
13、「私のセールスポイント」<一人5分間> P
  最終プレゼンテスト。5分間、原稿なしで話す。授業開始当初、これができる人は一人もいないが、全員クリアできるようになっていて、自信を持てるようになる。
以上のような試みに積極的に参加することによって、学生のプレゼンテーション能力は飛躍的に向上したと自負している。

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